なくやしもよの
さむしろに
しきひとり
かもねむ
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに / 衣かたしきひとりかも寝む
きりぎりす なくやしもよの さむしろに / ころもかたしき ひとりかもねむ
後京極摂政前太政大臣
- 現代語訳
- こおろぎが鳴く、霜の降りる寒い夜。むしろの上に衣の片袖だけを敷いて、私はひとり寂しく寝るのだろうか。
- ことばと技法
- 「きりぎりす」は今のこおろぎ。「衣かたしき」は共寝なら二人の衣を重ねるところを、自分の衣だけ敷く独り寝の表現。「さむしろ」に「寒し」と「狭筵(むしろ)」が掛かる。
- 背景と鑑賞
- 作者の後京極摂政前太政大臣こと九条良経は、新古今集の仮名序を書いた若き太政大臣。古歌のことばを重ねて秋の独り寝の寂しさを組み上げた、新古今的な本歌取りの見本のような歌。38歳で急逝した。